母学トークアインシュタインの逆オメガ5

赤ちゃんを知る。そして母になる。

第三回母学会議 赤ちゃんにやさしい街づくり

アインシュタインの逆オメガ〜脳の進化から教育を考える〜

講演
小泉英明
(株式会社日立製作所名誉フェロー 公益社団法人日本工学アカデミー上級副会長)

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じゃあ、こういうのは沖縄ならできるでしょうと。でも、そんな都市の中では狭いし、そんな場所なんか全然ありませんというふうに言われる場合が多いんです。これは大阪の一番ビルの谷間にあるような小さな保育園です。こんな狭いんです。3階建て、ビルの谷間にあります。ただ、近くに公園がありますから、公園も活用しています。でも、ここのところでみんなで一生懸命、工夫しているのは、ここに柵がありますから、こんな狭くて隣のうちがここにあるわけです。その中にみんなでかんきつ類を植えたんです。ミカンの種類、いろんなミカンがここには植わっています。

ご存じかと思いますけれども、アゲハチョウというのは自分の好きな木にしか産卵しないんです。カラタチにしか卵を産まないアゲハチョウ。ミカンの木じゃないと駄目ならば、オレンジの木、それを何種類か植えたら、市街地の所にアゲハチョウのほうから訪ねてきてくれたわけです。それぞれにそれぞれの種類のアゲハチョウが卵を産んでくれた。それを子どもたちが大切に育てて、そして、最後にはそれが飛び立っていくと。そこまで子

今、ソニーさんのお手伝いで、私は実は日立でずっとやってきたんですが、教育に関しては企業の枠組みを超えましょうというソニーの前の大賀 社長のお話があって、お手伝いを始めたんですが、そこで今、審査員長として既に千数百園の保育園の本当に大 事に考えてきたプロジェクトを全部、12年間で拝見してきました。みんな子どもたちというのは、自然の中で科学者なんです。小さいときから、これは先生たちが何か言うんではなくて、本当に一生懸命になって偶然いろんなことを見つけだす。むしろ保育者のほうがそれによって触発され、もう一度、理科の勉強をしています。

そして、そこのところで私がとても印象的だったケースが1つあります。野菜畑を作るというのはたくさんの保育園、幼稚園がやることなんです。皆さんもご存じだと思いますけれども、子どもたちは植物を一生懸命、育てながら、野菜を育てながら、毎日1日たっただけでもどうなったかなと思って、楽しみにして朝早く来たりするわけです。とても熱心な保育園の1つが野菜畑を作って、毎日、子どもたちが手入れをしながら楽しみにしていたんです。そしたら、このときにアオムシがついてしまって、葉っぱをバリバリ食べられてしまった。子どもたちがすごく困ったんです。せっかく大切にしてきた野菜にアオムシがついちゃったと。どうしよう。

保育者の人たちは、それには黙って子どもたちの行動 を観察していたんですけれども、そうしましたら子ども たちのほうの中から意見が出てきて、それだったら虫さ ん用の畑を一部分けてあげたらいいんだと。虫さんも食 べたいんだよ、このお野菜が好きなんだよということで、 隅に虫専用の畑に区切りまして、ここにアオムシを移し たと、そういう話が出てきたんです。

これは本当にすてきな話だなと思って、当時、私はそ れを拝見して感動したんですけれども、害虫とか、益虫 というのは人間が勝手に決めたことですよね。自分の立 場から見てどうかと。でも、子どもたちにとってはそう いうものはない。そこが私は温かい心の最初の芽生えの 1つではないかと感じたわけです。

これは古代インド哲学です。ヴェーダに紀元前500年 より前、多分2000年近く前から口伝で伝わってきて、 500年頃に初めてパーリ語に文字に置き換えられたんで すけれども、これは仏教より前ですから、仏教はこの思 想を一部取り入れておりまして、それが漢語に訳されると慈悲喜捨という仏教の用語に変わっていくんですが、 もともとはここにありますようなメタ、カルーナ、ムディッ タ、アペッカということです。

メタというのは、同じ命として相手を思いやる心、慈ということです。まさに母親が赤ちゃんを思う心です。それも含まれます。同じ生命として痛みを共有する心、漢語の悲というのは、誰か苦しんでいる人を見たときに同じように感じて、悲と自分も言ってしまったという非です。

それから、同じ生命として喜びを共有する心、喜、こ れは結構難しいんです。誰かがいい思いをすると、つい うれしくなくなるというのがわれわれの普段のことなん ですが、それから、自分の成果にも固執しないという捨、 慈悲喜捨と。

こういうのを子どもたちというのは、誰が教えなくてもまだ持っているんです。そういうものを大切にして大きくなってくれれば、そうすると今の社会がもう少し住みやすくなる。今の社会は逆方向に来て、多分、情報が関係していると思うんですけれども、どうしても自分がということが、国のレベルでもそうですし、いろいろなところでそういうものが、むしろ表に出始めています。私は今、この温かい心を育むのはお母さましかできない部分があるし、そこのところにすごく期待をしているし、わずかながら何とかお手伝いをさせていただきたいと思っております。どうもご清聴、ありがとうございました。

私は今、この温かい心を育むのはお母さんしかできない部分があるし、そこのところに強く期待をしています。 そして、わずかながらもお手伝いをさせていただきたいと、いつも思っております。どうもご清聴、ありがとう ございました。