母学トーク こどもたちは未来〜保育と育児の国際動向〜3

こどもたちは未来〜保育と育児の国際動向〜

講演
小泉英明
(株式会社日立製作所名誉フェロー公益社団法人日本工学アカデミー上級副会長)

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今日の午前中にお話ししたところは、ご覧になっておられない方もいらっしゃるかもしれないんですが、ちょっ とはしょらせていただきます。何を話したかを一口で言うと、アインシュタインというのは音楽が好きだった。 バイオリンを比較的、早く始めた。

アインシュタインが死んだときの脳の全体写真が行方不明になっていたのですが、それが2013年に発見され た。その写真で分かったのは、確かにアインシュタインはちょっと特殊な脳を持っていた。左右をかなり頻繁に 情報伝達できるような点が、優れていたのではないかと いうことが、1点、分かったということです。

このアインシュタインの脳の写真では、オメガが逆に なった形が現れています。逆オメガはバイオリンをやる と、ちょうど左手の指の運動に指令を送る脳の一部が肥 大する。その実例がアインシュタインでは出ていたんで すが、この前もお話ししたんですけれども、例えば東京 藝術大学の学長をなさっている澤和樹先生は、MRIを撮 ると、ここにオメガが出てくることが考えられるんです。

先ほどの新しい脳機能イメージング法を使いますと、生きたままの人間で脳のどの部分が働いているかというのが、かなり明瞭に見えるようになってきたんです。それで脳科学は急速に進展しました。ただ、急速に進展しても、今申し上げましたように、まだ分かっていないことだらけというのが実態です。

この辺のところも実際のきちんとした論文のほうで、明確にされています。これはわれわれの論文ではないんですけれども、年齢が若いときに始めれば、若いほどその関係部分の脳が大きくなる。年齢が高くなってから始めても、そこは大きくならない。これは先ほどの視覚野の臨界期と同じような話です。かなり基本的な体性感覚という感覚に属している話であるために、こういう顕著な臨界期という現象があります。

ただし、よく気を付けなくてはいけないのは、臨界期というのは感覚に極めて特徴的なんです。全ての脳機能に臨界期というのは間違っているんです。ですから、英語学習の場合は気を付けなくちゃいけない。皆さまはよくご存じのように、外国から来たお相撲さん、日本語を非常にうまくしゃべられますよね。モンゴルから来た方々 なんかは、日本人じゃないかと思うほどです。

時々、口のききかたが悪かったとか非難されているのを聞くと、外国から来てあれだけしゃべれているのに、そんなニュアンスまで正確に言えというほうが無理だよなと私は思っちゃうんです。自分なんか、英語であのように微妙な表現はとてもできないです。

というのは、彼らは中学生ぐらいまで、場合によって高校生まで、自分の国で自分の言葉しかしゃべってなかっ たんです。それなのに日本に来て、あれだけきれいな日本語をしゃべる。

人によっては、モンゴル系の言葉は日本語と親戚なんだと言うんですけれども、実は遠くてそんな親戚ではないし、大体モンゴル以外のお相撲さんも日本語をうまくしゃべっていますよね。そうすると、小さいときにやらなくちゃいけないという話はどこからも出てこないんです。こういうところも事実関係というのをよく考えないといけないということです。これはピアニストでも同じことが言えるということを示した結果です。

ここで1つ重要なのは、今日の午前中にお話ししたこ とです。赤ちゃんの場合は生まれたてのときに種々の原 始反射があります。たとえば、赤ちゃんの手に指を触ら せるとギュッと握り締めてきて、両手で持ち上げること もできるぐらい強く赤ちゃんは指で握ることができます。

これはおサルさんの時代から発達しているところです。母親にしがみつくためにも必要なパワーグリップという、握り締める指の機能です。それが従来型の指の運動制御です。というのは、樹上生活では木が落ちてしまったら困るから、飛び移る際にも確実に枝を握り締めていたんです。