母学トーク 子育てにおける躾とは1

赤ちゃんを知る。そして母になる。

第三回母学会議 赤ちゃんにやさしい街づくり

子育てにおける躾とは

講演
仁志田博司
(東京女子医科大学名誉教授)

< 1 2 3 4 5 >

皆さん、こんにちは。きょうは僕、富山に来て本当に、もう驚いたというか感激したことがあるんです。午前中 に、富山市まちなか総合ケアセンターを訪問したんですが、そこでお産の後に、ちょっと疲れたり、肉体的にも 精神的にも疲れた方が、ちょっとお休みできる施設があるんです。今、産後のメランコリー、マターナルブルー(軽 い産後鬱)という、ちょっと落ち込んだ気持ちになる方は、なんと20%から30%ぐらいいるんです。そのほと んどの方は周りからのサポートで回復するんですけれども、ただ環境が悪いと、なかなか大変になることがある ので、富山市は素晴らしいですね、そういう施設が、本当にいっぱいできています。それから皆さん方がお仕事 をしながら子育てをしているときに、保育所に預けますよね。そうすると保育所は、ドクターというか看護師さ んがいない所が多いので、ちょっと風邪気味だとすると断られたりしますよね。そうするとお母さん方は、きょ うは仕事に行かなきゃいけないのにって、本当に、またそれも精神的な負担になりますよね。そういうお子さん を預かってくれる場所もできているんです。僕は新生児を40年以上やって、いろんな所で赤ちゃん健診の仕事 をしていますけれども、きょう見た富山市の施設は、多分、日本の一つのモデルになるんじゃないかと思って。 皆さん、富山市ですよね。本当にYou are luckyで、本当に運がいいと思います。

ということで、きょうは子育てトークの中のテーマを、「しつけ」ということを僕に与えられたんです。そのこ とを話すんですけれども、一緒に話す先生の方が僕よりも専門家なんで、僕が話すのが何となくこそばゆいんです。

僕は昨日も今日の午前中も、赤ちゃんに「あたたかい心を育む」ことがどんなに大切かということを、ずっと 話してきたんです。どんなに頭のいい子でも、どんなに運動神経が優れていても、他人のことを思うことのでき ない子どもに育てると、その子は幸せになれないです。ですから、子どもを幸せにしたいと思ったらば、あたたかい心を育むというのが一番大切なんです。そうすると、いつも僕は「あたたかい心・あたたかい心」と言うので、 必ず話が終わった後に、「先生、しつけはいいんですか」って言われるんです。それでちょっと話そうかなと思っていたこともあって、たまたま今日はこういう命題というかテーマを与えてもらったんで、ちょっと僕の考えていることを話そうと思います。

まず皆さん方の子育てが大変なのは、昔と違って子育 てをサポートしてくれる環境が、どんどん変わっちゃっ たからなんです。僕は75年前に生まれたんで すけれども、その頃には、僕のおふくろは職業婦人でし たが、それで7人の子どもを育てて、さらにおやじが病 気をしたりと大変だったんですけれども、それほどの大 変な思いをしないで子育てが出来たのは、周りの人が、 みんな助けてくれたからなんです。でも今はなかなか大 変ですね。福井県はその意味では地域のつながりが非常 に強い県と伺っていますけれども、それでも昔と違って 大変なんです。

ですから、今までは保育園に預けたりするのに、おじ いちゃんやおばあちゃんたちから、「お母さんは子育て が仕事だ」なんて言われた人がいっぱいいたと思うんで すけれども、でも今は、女性も当然のことながら男性と 同じような能力がありますし、そして社会も、それを望 んでいますから、女性が働くのは、もう当たり前なんで す。保育園に預けるのは例外ではないです。

ただ、それをサポートするシステムはあんまりないんで、お母さん方がいろいろ精神的にも肉体的にも困ることがあると思うんですけれども。繰り返しますけれども、その意味では本当に富山県は素晴らしいです。

ということで、子育てをサポートする環境で必要なことは当然ですけれども、きょうはおじいちゃん・おばあ ちゃん方もいらっしゃっていると思うんですけれども、今は若いおじいちゃん・おばあちゃんが多くて、みんな 元気なんです。だからもうどこか遊びに行こうというお じいちゃん・おばあちゃんが多いと思うんですけれども、 でも子育てにおじいちゃん・おばあちゃんの存在が大切というのは、人類がここまで発展するのに大切な役目を 持っていたのです。哺乳類の中で人類だけが、いわゆる子どもを産む年齢が終わっても、その倍ぐらい生きるん です。今、女性の方は、平均年齢は87歳ですよね。大体、閉経の平均年齢だったら50歳前でしょ? 人類の女性 はその倍ぐらい生きる理由はなぜかというと、人類において子供はたくさんの社会的なことを学ばなければなら ないので、おじいちゃん・おばあちゃんが社会から学んだ知識を子育てに生かさないと次の発展がないというぐ らいなんです。ぜひまだ若いおじいちゃん・おばあちゃんが旅行に行ったり遊びに行ったりしたい気持ちはいっ ぱいあると思うんですけれども、子育ての最初の時期は、ぜひ若いカップルをサポートしてあげてください。

ですから、今言ったように、本当に他の哺乳動物では生殖年齢が終わってから、その倍も生きる生き物はいないんです。人間だけなんです。ですから、これは人類という高い知能を持った生き物は、その後も、自分の子育てが終わった後も、次の世代の子育てを助けてあげる。そういう社会的な任務があるというぐらいに思ってください。