母学トーク 子育てにおける躾とは4

子育てにおける躾とは

講演
仁志田博司
(東京女子医科大学名誉教授)

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躾ということに関して、もし皆さんが「学校で躾をしてもらいましょう」って思っていらしたら間違いです。学校では教育をするんです。学校では文字の書き方とか数の数え方とか、という教育なんです。躾は「学習」なんです。教えてもらのうでなく自分で自然に身に付けるものなんです。子供達が、お父さん・お母さん・兄弟たち・友達と一緒に生きている中で、自然に理屈なしに身に付くのが学習なんです。

余談のようですけれども、チンパンジーとかゴリラって、とても頭がいいですよね。でもチンパンジーやゴリラには教育はないんです。だけれども、学習をして賢くなる。例えば、アブラヤシというヤシの実をお母さんが石と石でバッと割って中身を食べるんです。そこに子どもがずっと見ているんです。自分も食べたいと思って、親の真似をしてやるけれども失敗ばっかりする。お母さんは絶対に教えない。だから子どもは、お母さん・お父さんのやるのを見て自然に身に付くんです。躾もそうなんです。家の中で子どもたちは、お母さん・お父さん・兄弟・周りの人たちのやることを見て身に付ける。そうして、生きる上の厳しさを学びますよね。ですから「学校で躾をしてもらいましょう」というのは間違いだということを、ぜひ皆さん肝に銘いてください。

動物には教育はないと言いましたけれども、ちょっと余談ですけれども、例外的にある種の鳥には教育が少しあるようです。例えばウグイスは「ホーホケキョ」って鳴きますよね。あれは、これは昨日お話しになった小泉博士から教えてもらったんですけれども、ウグイスは、お父さんウグイスが鳴いて聞かせるんですって。そうすると子どものウグイスがまねして鳴く。間違っていると、お父さんウグイスがもう一回鳴いて聞かせるそうです。 教育みたいですけれども、本質的に動物には人間のような教育はないそうです。

それからちょっと躾とは離れますけれども、早期教育っ てありますね。皆さん、早く子どもが英語や数学ができ るように小さい時から教えようとしますね、あるいは音 楽とか運動もそうですけれども、確かに運動とか音楽と か、そういうものは早く勉強したほうが将来的にうまく なるかもしれません。でも人間は持って生まれた才能が ありますから、お母さんとお父さんが、もうものすごく訓練のように子どもに教えて、5年、10年経って花開く 子供がいる一方あまり効果がない子供もいます。それで 一番人生にとって大切な小学校に上がるぐらいまでの感 性の高い時期をそれに費やしてしまうのです。それで得るものと失うものを考えたら、もちろん特に藝大の人の ように持って生まれた才能がある人は別ですけれども、多くの人はマイナスの面が多いのです。もちろん感応期 といって、ある時期を過ぎちゃうとなかなか才能が伸びないということが知られています。それらには音楽とか 語学が知られており、それは事実ですけれども、私は新生児の専門の小児科医として、子どもが優しい心を学び 身に付けることが、人生においてどんなに大切かを身にしみて感じています。ということで、あまり早期教育と いうか、今街中にはいろいろなちいさな子供を教育(多分訓練)する専門の学校みたいにいっぱいありますから、 そういうのに惑わされないほうがいいと思います。ただ、もしもお父さん・お母さんが、この子は特殊な才能があ ると気が付いたら、専門家に相談する。そういう特殊な例の場合は子どもの将来になるかもしれませんけれども。