『母学』小林 登が母に伝えたいこと1

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「母学」小林 登が母に伝えたいこと。

講演
葛西康仁
(アップリカ育児研究所 クリエイティブディレクター)

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アップリカ育児研究所 葛西康仁でございます。たくさんの赤ちゃん、お母様もう少しだけ我慢していただい て私の話を聞いていただければと思います。第2回母学 会議として小林登先生から、私が直接お聞きしたことを 今、簡単にざっとお話いたします。

ボガク、ハハガクとも読みますが、『母学』の書籍、皆様のお手元に届いておりますか。スライドが見えにくいかもしれませんが、『母学』の副題には「赤ちゃんを知る。そして母になる。」です。「赤ちゃんを知っていただきたい。母になっていただきたい。 そして、よい保育士になっていただきたい。」ということが書かれております。

小林登先生のお写真です。国立小児病院名誉院長、東京大学名誉教授、世界小児科学会の会長をされました。 富山はお魚とお酒がおいしいと何度か来られていますが、 今回は少し体調を崩されており、リハビリ中なので富山 まで少し難しくて、私が代わりにお話させていただいて おります。先ほどの富山市長 森雅志様のお話の通り、 富山市は、立派な母子のケアーセンターが中央にあり、 街にはお花が咲き乱れ、赤ちゃんとお母さまには素敵な 環境ですね。小林先生も大好きな街とおっしゃっておら れました。

6mm 12mmについて

私が先生から初めてお聞きしたのは、「6ミリ」と「12 ミリ」という二つの数字です。東京の渋谷の小さなおすし屋さんで、私に「これは葛西君、何の数字だと思うか。」と。先生は続けて「これ(6ミリ、12ミリという数字) はおなかの中の赤ちゃんの身長だ。まず0.1ミリの受精 卵から、約1か月でこのように6ミリに広がる。このとき、 お母さんは妊娠しているということは全く分かっていない。1か月半で12ミリ。何と6ミリのときに、心臓の脈 が聞こえるんだ。完全に心臓の原型と脳の原型が既にで きている。12ミリになると1か月半で、もう手足ができ ている。」とおっしゃられました。まず私は二つの数字で感動しました。このように生命、赤ちゃんがおなかの 中に宿っているということをぜひ男性にも、女性にも知っていただきたいということが一つ目のメッセージでございます。

6ミリから12ミリになって、その後成長し、赤ちゃんが出てきたところです。これは、 私の友人の『Vogue』のカメラマンが撮った写真ですけれども、非常に珍しい写真です。ステファノ・アザリ オといって多分、皆さまもいろんな雑誌でご覧になって おられるかもしれません。赤ちゃんと子どもを撮れば世 界一うまいカメラマンがこの誕生の瞬間を撮りました。 これを小林先生にお見せすると先生は、「この瞬間のオ ギャーは悲鳴なんだ」と。これをみなさんに知っていた だきたい。この瞬間に赤ちゃんはお母さまから別れるわ けです。穏やかな、暗いお母様のおなかから地上におり てきて、ガチャガチャとうるさい器具の中に、明るい照 明がついたベッドに、室温も寒いかもしれません、そん なところに赤ちゃんがおりてきます。そのための悲鳴の オギャーだというふうにおっしゃられました。たった一 人で赤ちゃんは産道をくぐり抜け地上におりてきたので す。この偉業をお母さまもお父さまも、誉めてあげてく ださい。二つ目のメッセージです。

ニューロンについて

先ほどの小泉先生のお話にもありました、ニューロンとニューロンを結ぶ接合部、シナプスの形成と除去ですが、使われないニューロンは喪失します。

子ネコの光刺激遮断について

生まれてすぐの子ネコの目をふさぎ光の刺激を遮断す ると、子ネコの視覚は元に戻らない。1981年のノーベ ル生理学医学賞をとった実験です。ということは、生ま れてすぐの赤ちゃんのネコに光の刺激を与えないと、視 覚は元に戻らない。大人のネコに同じことをすると、何の問題もなかったという実験結果です。すなわち赤ちゃ んの間にどれだけ、どういうふうに刺激を与えるかということが重要です。ネコの視覚には光の刺激が必要です。

シナプスの変動について

先ほどちょっと申し上げました乳幼児のニューロンとニューロンを結ぶ接合部のシナプスの変動についてです。 外部からの刺激によりニューロンとニューロンがくっつ いてシナプスは増えます。つまり外部からの刺激がない と神経細胞はつながりません。視覚野のシナプスの変動 は1か月から急速に増え、8か月でピークに達すると。ピーター・ハッテンロッカー教授、ロッチャーとも言うそうですが、この方が一つ一つシナプスを数えられました。妊娠7カ月の胎児で1億2,000万個、新生児の生まれたときには2億5,000万、8か月で5億8,000万です。視覚野 でいえば8か月が最大のピークを迎えます。前頭前野でいうと5歳と10歳ぐらいまでだろうということが、ピーター・ハッテンロッカー教授の研究で分かりました。すなわち、乳幼児期に外部からの刺激がないと神経細胞がつながらないということです。

母子相互作用の研究について

小林先生は、母子相互作用の研究を日本で初めて、多くの学者と共に、厚生省のなかで始められました。その 研究のなかで、母子の相互作用は、お母様と赤ちゃんの相互の刺激となり、母子の心と体に影響を与えるとの答 えを見つけられました。乳幼児期のシナプスの形成が最 大になるときに、母子相互作用の必要性を説かれたのです。つまり、この母子関係を確立し、完成させるためには、お母さんと赤ちゃんは感覚を介して、おたがいに行動によって影響しあう相互作用が必要です。これを「母子相互作用」といいます。「母子相互作用」によってお母さんと赤ちゃんの心と体のプログラムにスイッチが入りま す。お母さんには母乳の分泌が、赤ちゃんには心と体の栄養が注がれて、赤ちゃんはすくすくと心と体が発達・ 成長していきます。感覚器のコミュニケーション「母子 相互作用」が、赤ちゃんの発育の基本です。お母さんか らは、「笑顔で赤ちゃんの目を見る」「抱っこ」「なでる」「語りかける」などのはたらきかけ-刺激のインプットが必 要です。また、お母さんが赤ちゃんを認識し母性を確立するためには、赤ちゃんからの「泣く」「笑う」「手足を 動かす」などのはたらきかけ-刺激のインプットが必要です。

この写真のようになでたり、スキンシップをしたり、目と目で赤ちゃんと見つめ合ったりと、あらゆることが赤ちゃんとお母さんの相互作用になります。それが刺激となって赤ちゃんの心と体がすくすく育ちます。そういう意味で、母乳保育というものがミルクの栄養ということだけではなくて、もちろんそれも大事なんでしょうけれども、スキンシップということが一番赤ちゃんとお母さんのあいだで自然に行われる大事なことです。