パネルディスカッション 母と子の芸術 4

パネルディスカッション 母と子の芸術

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宮廻:

絵描きは、それを経験値から割り出しています。私は子どもを産んだことがないので、その辺はよく分からないのですが、ある意味では絵を描くというのは、いろいろなものを生み出すという意味では母学に近いところがあるように思います。また「母」という漢字の、あの点々はお乳を連想しますが、なぜ縦に2つ付いているのかというのが、未だに不思議です。人間以外は縦にお乳が付いていてもおかしくないのではないかと思いながら、母という字をよく見ております。

伊東:

私は母になったことはありませんが(笑)、今後、男が母親の代わりをすることも多いかと思います。この中で母という立場を持つ方は新井さんだけでございます。そのお母さんとしての経験、そして女性的な視点からこのご本について、どう思われましたか。

新井:

はい、先生のご講演から、やはり温かい心というのはとても神秘で大切だと、葛西さんのお話でも、優しさが大切だと思いました。私も、22歳の娘がおります。生まれてくれたときに、「ああ、本当にこの子が私をお母さんにしてくれた、本当に生まれてくれてありがとう」という気持ちになりました。今22歳なのですが、今でも「生まれてくれてありがとう」と言っていますが、娘はうざいと思っているようです(笑)。お腹からぱっと産まれた時に皆さん感動するとおっしゃいますが、産まれてきてギャーと泣いた瞬間は、感動と同時に少し寂しかったのです。この子は1人の人間だ、すごい存在感だと思いましたが、もう少しお腹の中で一緒にいたいと思いました。一心同体と言いますか、娘がお腹にいる時が幸せだったものですから、出てきた時は一瞬寂しかったですね。でも、生まれてくれて本当にありがとうと思っています。この本が22年前にあったら、またこの育児の原理も母学もその時にあったら、もう少し肩の力を抜いて楽に子育てができたのではないかと思います。体力的には健康でしたが、娘を40で産みましたので、やはり不安なことや心配なことがたくさんありました。今回このようなお役を引き受けたので、母子手帳をもう一度見てみました。そうすると、いろいろ感動的なことも書いていますが、心配なこともたくさん書いていました。例えば世田谷区は、3歳児の検診があります。その時に、保健師の女性の方が「丈夫に元気に育っていますね」と一言言ってくださったことで「良かった、いろいろなことを心配していたけれど大丈夫だったんだ」と、とても安心しました。