パネルディスカッション 母と子の芸術 8

パネルディスカッション 母と子の芸術

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新井:

それでは聞いてください。『“ あたたかい心が育つよう、子ども達に希望と感謝の祈りを” おぼえていますか 初めてわが子を抱いた日のことを ただひたすら 小さな生命の幸せを願った 親としてのあの素直な心を いつも いつまでも 忘れずにいてください。あなたにとって どんなにつらく 悲しいことがあった日でも、たとえ離れていても、あなたの やさしい思いは きっと子どもたちの心に届くはずです。一日に一度 たった一秒でもいいのです 子どもたちが心のあたたかい人に育つよう 希望と感謝の祈りをささげてください。そしていつまでも つづけてあげてください その祈りは あなたの心まで 幸せの光で満たしてくれます。』

伊東:

ありがとうございました。手塚治虫先生と、お二方の友情というのは亡くなられるまで変わることはなかったし、数々のヒューマニズムに満ちた作品の中にこのような心や、このような運動があったと思うと、日本のマンガは大きな文化として育っていますが、そのような背景があったんだと、手塚先生がいたからこそと思います。その考えが様々な分野と繋がっていることが、もう少し世の中に知れ渡るようになれば、彼らが進めてきた運動の意味がもう少し理解されるというふうに思いますし、それが私たちの責務かと思います。北代先生、日ごろ、フランス文学の翻訳をされていて、やはり子どもについての記述はどこの国でも多いと思いますが、なかなか自然に表現されることは少ないと思いますが。

北代:

そうですね。かつてフランスには、子どもがいなかったのです。子どもがいないというのは、つまり、子どもの時から一個の人格をもつ大人として扱われているという意味です。だからイギリスは児童文学が発達しましたが、フランスには子どもの絵本というものがありませんでした。それが、このところ、最近20年ぐらいでフランスでも児童文学というものがだんだん生まれるようになってきて、子どもが子どもとして扱われる傾向が出てきたと思います。

伊東:

ありがとうございます。宮廻先生は、是非、またこういう講演にも関わっていただきたいと思いますが、赤ちゃんのことを考えるということは、私たちがいくつであっても、未来を考えるようで素晴らしいことだと思います。