パネルディスカッション 母と子の芸術 6

第一回母学会議

2016年10月21日(金)丸ビルホール

マザープロジェクト

おまもりうた:「誕生」

脳科学から見た芸術と倫理

基調講演

小泉英明

パネルディスカッション

「母と子の芸術」

パネルディスカッション 母と子の芸術

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仁志田:

この写真の赤ちゃんを見てください、この赤ちゃんは、産まれてからまだ10分です。頭が濡れているのは羊水です。目を見てください。何を見ていると思いますか。皆さんを一生懸命見つめているのです。小泉先生のお話にあったように、人間の赤ちゃんは生理的に早産ですので、生まれてしばらくは身動きもできません。寝返りをうつのは3、4ヶ月経ってからですし、歩き出すのは1年経ってからです。しかし立派な脳の機能は持っています。だから、赤ちゃんは何をしているかというと、誰が私を助けてくれる人か、誰が私をケアしてくれるか探しています。そしてその人にニコッと笑って愛情を振りまきます。赤ちゃんが可愛いのは、赤ちゃんの巧妙な作戦かもしれません。ですからこんな素晴らしい顔で産まれてきます。今言ったように、赤ちゃんはそうやって、お母さんを探します。一方お母さんは、赤ちゃんを抱きしめておっぱいを飲ませることによって、女性が母性に目覚めます。私たちと一緒に葛西健蔵さんの研究会を一緒に行いました内藤寿七郎先生という、僕の大先輩で101歳で亡くなられた小児科医がいますが、その先生は、「小児科たる者は代理母という言葉を使ってはいけない」とおっしゃいました。感動いたしました。代理母というのは他人の受精卵を、変な言葉ですが借り腹の子宮に移植して育てて産みます。その女性が妊娠したとしても妊婦ですし、子どもを産んでも単に産婦です。母というのは、その赤ちゃんを抱きしめて、おっぱいを飲ませ、赤ちゃんが泣くとおろおろしながら一生懸命ケアし、そうして女性が母性に目覚めるのです。このプロセスができないから、たとえ自分で産んでも自分の子どもをかわいがれない母親になれない女性がいて、巷で時々話題になる児童虐待が起こります。このような母親になるプロセス(mothering process)をキチンと踏めば写真のような素晴らしいお母さんと赤ちゃんになるです。実は、日本の子どもは、世界で一番幸せでした。江戸の終わりから明治維新にかけて、たくさんの人がヨーロッパから日本に来ました。そしてヨーロッパの人々は、何千という本を書きましたが、そのどの本を開いても「日本ほど子どもをかわいがる国はない」と記されています。そのことを纏めた97歳の渡辺京二さんの有名な「逝きし世の面影」という本がありますが、その中に日本を代表する事柄としてわざわざ一章を割いて「子どもの楽園」と書いてあります。