パネルディスカッション 母と子の芸術 2

パネルディスカッション 母と子の芸術

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葛西:

それから本日は「母学」の著者である小林登先生が少し体調を悪くされておりましてご参加できないので、私がメッセージを預かっております。小林先生は東京大学名誉教授、国立小児病院 名誉院長で特に難病の子供達を長らく診られていました。現在の世田谷にあります国立成育医療研究センターです。小林先生は世界の小児科学会の会長も務められました。先生が皆さまにお伝えしたいことは、「日常生活の家庭の中に優しさがなくなったとき、社会、ひいては国家が大きな問題を引き起こすように思えてならない」「社会に優しさを取り戻すには、赤ちゃんの時から優しさを体験でき、生きる喜び一杯になることに尽きる。優しさがとても重要だ」ということです。先生に「優しさとは何ですか」と私が確認いたしますと、先生は「子どもたちの五感を心地よくすることだ」と。目や耳や匂いや皮膚ですね。例えば撫でることにおいても、それが撫でられ方によってどれだけ五感が気持ちよくなるか、心地よくなるか。優しさが全てだと。そうしないと日本は大変になるということを皆さまにお伝えして欲しいということでございます。以上です。

伊東:

本当にそのような言葉に感銘を受けます。葛西さんのお父上もよく使われていました「三つ子の魂百まで」という日本の昔から伝わる育児についてのことわざがあります。先ほどの小泉先生の画期的なアプローチで、脳の働きが解明されるにつけ、それはいかに真実だったかということが分かるような気がしますが、小泉先生、いかがですか。

小泉:

その通りだと思います。同じような言葉が世界中にたくさんあることは皆さまご存知かと思いますが、それは本当に真実をきちんと看破した、そういう言葉だと思っております。

伊東:

仁志田先生は長らく、葛西さんと行動を共にされて、全てを赤ちゃんのためにと言っても大げさではない働きをされていらっしゃいます。赤ちゃんの医療を世界に普及させるために様々なところにも行かれました。そういうお立場から、この本のことについても一言お願いいたします。

仁志田:

私は小児科医ですが新生児を専門にしていますので、産まれる前後の妊婦さんから胎児というのが仕事の7割ぐらいです。小泉先生のお話は少し難しかったかもしれませんが、小泉先生とは葛西健蔵さんが企画したいろいろな学会でご一緒させていただいておりますので、今日はその肝とも言える一番大切なところをお話になられたのだと思いました。結局、表面的な知識とか技術なども必要ですが、本当に大切なのは相手のことを思いやることが、人間のできる最も素晴らしいことだということを教えてくれたと思います。後で、臨床の現場からそのことに触れたいと思います。