母学トーク お腹の中のノイズ2

お腹の中のノイズ

講演
宮廻正明
(東京藝術大学大学院教授)

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これがその一つの顔。で、今うちが研究しているのは、 この顔というのを微振動、なぜ死に顔と寝顔の区別がつ くのかと。それで今、研究しているのは、100分の1ミリ、何分の1ミリ、顔というのは微振動を起こしているんで す。そうすると、この微振動によって目に見えないとこ ろによって人間は、目に見える判断をするわけです。こ の人は生きている、この人は死んでいる、この人は寝て いるという判断というのは、この微振動によってやる。 そうすれば、例えばアンドロイドのロボットにこの微振 動を与えれば、生き返るのではないか。生きたアンドロ イドができるんじゃないかということを今考えて、これ を特許申請しようと思っているんです。特許申請するも のをこんなところで話していいのかという問題が若干あ りますが。それでポンプ式、エア式というもので顔の皮 膚の裏側に、要するに空気なり液体なりを派生させ振動 させる。

こういうことというのは、ある意味では非常に子供の 発想的な、幼稚な発想なんですが、要するにポンプでエ アを当てたり、液体を入れることによって、人が生き返るんじゃないか。非常に原始的な物の考え方というのは、要するに子供の発想から来ているわけです。次をお願いします。

そして、この微妙に揺れる、目に見えない風というの が、これが富山市のおわら風の盆という。風の盆は、普 通の初日、2日目というのは何をしているかというと、 普通に踊りが出ているんです。観光客はそれを見て、風 の盆だと思って満足して帰るわけです。でも、本当の風 の盆の面白さというのは、宵が終わってから。地元の人 がするおわら風の盆が一番面白いんです。もう皆さん観 光客は引けてしまった4時、5時あたりが、どこからともなくふっと三味線の音とかそういう音が湧き出してくるんです。そして、ふうっと、本当に気配、魂みたいなものがずっと村の中を揺れているんですよね。どこからともなく現われて、どこからともなく消えていく。人間というのはある意味ではそういうもんじゃないかなと思います。

そういう意味では、微妙に揺れる目に見えないもの、この感覚というのは子供の心理。それから、子供の理屈がない乳幼児の意識というのは、きっとこの微妙に揺れ動く気持ちというのが子供と共通するものがある。そうすると、このおわら風の盆を見ていると、なんとなくそこでは大人なのか、子供なのか分からない、ある意味では非常に人間を超越したものがこういうもの中に現われているんじゃないかと思います。次をお願いします。

それで、これがマネの絵なんです。マネの絵に、この 微振動を起こさせる。今これは静止画面なんですが、こ れをこういうふうにぴぴぴと揺らすと、マネが生きてく るという実験です。これは静止画面で、今は動画面にし ていないんですけれども、動画面にすると非常に面白い 映像が出てくるんです。こういうことから何が考えられ るかというと、今、3Dがあります。3Dは複眼で、視差 で立体を見ようとしているんですよね。ところが、右目を見て、左目を見ると、右目のものと左目のものが見え る、見たものが違うんです。それで、人間というのはこ の間隔の中で、頭の中でそれを合成して復元して1 つの画像にするわけです。ということは、人間はそうい うことを無意識のうちにしている。

それで今考えているのが、移動手段を放棄した自動車を作りたいなと思っているんです。動かない車。だんだん年を取ってくると徘徊するんで、その箱の中で徘徊すればいいのかなと。例えば頭がぼけるということがすごく大変なわけです。じゃ、ぼけないようにするにはどうすればいいのかというと、この目の視差を合成する、そういう頭を使えばぼけない。要するに、人間は右足と左足を出して歩いているんです。ということは、体が左右にぶれているわけです。なおかつ、歩くというのは上下に揺れているわけです。左右の揺れと上下の揺れを人間は頭の中で合成して、景色が動いていないように見せているわけです。ということは、普段、物を見たり歩いたりしてということは非常に頭を使っている。それで頭は非常に活性化している。それが寝たきりになり、一点を見て脳のぶれというものが生じなくなるということは、ある意味では頭を使わなくなる。だから、だんだん頭がぼけてくるというのは、脳を使うかということ、歩くということがいかに脳みそを使うかということ、このぶれ4ということが。そうすると、このぶれを活用すると立体が見えるんじゃないか。それで、今、うちが開発しているのが、ぶれによって一つの生き物になる。立体に見えるというこのぶれというものを研究すれば、ある意味ではここには大変な価値が眠っているんじゃないかと思います。次をお願いします。